2014年12月18日木曜日

労働組合の組織率17.5%

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 平成26年12月18日の日経新聞の朝刊から。
 「労働組合の組織率、最低の17.5%」という見出しが目に入りました。
 全国の労働組合の推定組織率ということで、平成26年6月末時点で、17.5%であり、過去最低だそうです。
 これは、厚生労働省の調査。推定組織率とは、雇用労働者に占める組合員わ割合だそうで、労働組合の員数は、984万9000人とのこと。

 労働組合。
 勤務弁護士時代、事務所の仕事として、使用者側で団交に出向いたり、2000年前後の金融機関再編の嵐の中、信金の職員の全員解雇事件の代理人などを他のベテラン弁護士の方々と共にさせていただきました。
 また、外資系企業の残業代未払い事件での訴訟活動を手探りでさせていただき、勝訴的和解で数百万円にのぼる解決金の支払いをうけたこともありました。
 
 いわゆる労働問題、特に解雇などは、労働者にとっては死刑宣告のようなものだと思います。
 給料という月々の収入の見通しがなくなり、明日、来月からどうやっていきていくのか。次の職を探して、すぐに職が見つかるならまだいいです。それでも、新しい使用者、新しい職場、新しい同僚。
 すべてがうまくいく保証はどこにもなく、緊張感の中で1日、一ヶ月を過ごしていくこととなります。
 
 そういった職場における労働者の立場。
 抗いがたい力が加わったときに何も抵抗できないの。一人では無力。
 そこで、労働組合。同じ立場の労働者が集団となり、使用者に対峙する団体。

 このブログのタイトルにあるように、私の中での「使用者」のイメージは、自営業者であった父と母です。父と母が、成美堂の他の職人や、職員の方々の「使用者」です。
 父と母の言葉の意識から子供なりにうかがえたのは、「働いてもらっている」という意識でした。決して、うちで「働かせやっている」といった意識はなかったと思います。
 それはなぜかと考えるに。
 この職場で働いてくれる人がいるからこそ、店はもっている、この人が去っていたらまた次を雇えばいいという問題ではない、ということがわかっていたからだと思います。

 そういった姿を子ども心に見ていたため、「使用者」イコール、労働者を「搾取」といったイメージはなかなか得られませんでした。
 むしろ、小さな店だったので、労働運動、組合活動というのはなかったかとは思うのですが、「労働者」「労働運動」というと、経営者が必死で資金繰りをしいてるところ、人の気も知らずに能天気に賃上げ要求など要求だけをする活動、といったイメージをうっすらもっていました。
 解雇されたというのなら、解雇されるにはそれなりの理由があるだろう、我が身を振り返らずに、相手だけを一方的に攻めるのであれば、後ろを振り向いて人のせいにしていないで、前を向いてさっさと次の職場を探したほうが時間の使い方としていいのではないかとすら感じていました。

 しかし。やはり、ことによりけりなんだと思います。
 例えば。職場でのセクハラ、パワハラ。他の同僚、上司は何もしてくれない。例えば、合理的な理由のない賃金差別。
 辞めて次を探せば済むという話ではないと思います。それくらいの想像力はあります。
 となると、経営者、他の上司も助けてくれない。自分一人。
 そのような時、一緒の立場に立って助けてくれる労働組合があれば。違うのだろうと思います。

 実際。
 昔昔、弁護士業をしていないとき。目の前で,今でいういわゆるパワーハラスメント行為が繰り広げられているのを目撃しました。一人の人を特定の人が、皆の前で一方的に罵る行為。その場の雰囲気ももちろん悪くなります。その場にいる人には皆、その怒鳴り声か聞こえます。
 しかし。誰も、その怒鳴り続ける人を止めようとはしません。立場ではないので、ほかの誰かがさすがに止めるだろうと当初、呆然としつつパソコンに目をやりつつじっとしていたのですが、結局、私も含めて誰も止めることのないまま、怒鳴っていた人は去っていきました。
 上司にあたる人も誰も、止めず、怒鳴られ続ける人はただ一人、怒鳴られつづけていました。実際にはなんの落ち度もないのに。
 驚きました。世の中に本当にこのようなことがある、このような人がいるのかと。
 ターゲットは決まっていました。
 そして、私が目撃した2回目。
 自分が立場でないことはわかっているけど、しかし自分の立場だからこそというのもわかっていたので、一言いって止めようとしたとき、ついに見かねた上司にあたる人が、罵りつづける人に対して、言葉をかけました。
 「○○くんっ!仕事上の注意をするにしても、その言い方はあかん!」と。
 以後、罵る人の言動か変わりました。
 注意をされてギョとした罵る人が返した言葉は忘れられません。初めてストップをかけられて、怯えた顔で言い返した言葉。
 「これは僕の個性ですから!
 「そんなのは、個性じゃない!」すかさず言い返され。
 こういう方が各職場にいれば、労働組合はなくてもいいのかなとは思います。

 実際、使用者、経営者が、職場の隅々まで目をいきわたらせるのは不可能だと思います。
 実家の店でも、職場での職員どうしのイジメといえるようなものがあったようです。しかしそのことが経営者の耳に入るのは、もうターゲットの人が辞めることが決まってから。
 
 そういう意味では、働く人の職場環境について、といったわかったようなわけのわからない言葉ではなく、働く人が気持ち良く働ける職場、つまりその本来の期待される能力を発揮し、会社・事業の売り上げ増に貢献してもらうためには、その意味で職場の環境を整える責任は、経営者にあるのだと思います。
 環境を整えるというのは、パワハラ、セクハラ、心身の故障に繋がりやすい加重労働をしないようにする仕組み作りについて、経営者には、人を使うものとしての責任があるのだと思います。
 
 が、しかし。その経営者自身が、そうした仕組み作り以前に暴走したとき、誰が止めるのか。
 労働組合や、労働基準監督署なんだろうと思います。
 
 といったことをつらつらと考えながら。
 「労組組織率、最低の17.5%」。
 よい経営者が増えたということでしょうか?そんな理由は見当たらないので、単に、組合に助けを求めることはしていないというだけなんでしょうね。別の受け皿。敷居の低くなった、弁護士さん?
 
 上の写真は、「週刊ダイヤモンド」。
 「もうけ主義の労組に用心」として、「弁護士でもないのに労働相談が有料」「解決金の組合取り分が大きい(通常は1割から2割)」などとありました。
 労働組合も組織として生きていかないといけないから、解決金から1割、2割と手数料?を請求するんですね。
 要は、弁護士も含めて、他人の力を借りようと思ったら無料はあり得ないということか。
 
 それと。最近、考えたこと。訴え提起をするのは権利だけど、時に、不当訴訟としてその責任をとってもらうことがあります。
 労働基準監督署への申し立て等についても、不当なもの、明らかに事実と違うことを知ってなされている申し立て等もあるかと思います。労基署の調査に協力することによる使用者の手間は相当なものです。
 不当申し立てについては、相応の責任が法律上も認められるのではないかと考えています。事実確認不十分なまま、唆した人も。
 使用者も労働者も、まっとうを基準に行動していれば問題なし。
(おわり)

*中国の有名メーカーだそうです。紹興酒。


2014年11月27日木曜日

「そこで実施したのが生産コストの「見える化」だ」,え?今までは…

*「一位じゃなきゃヤダーーーーー」
 「一乗谷で、一位を誓う 指原莉乃(二位)」
 滝行しても、「反対側の扉が開きます。」


平成26年11月25日の日経朝刊、「私の履歴書」。コマツの元社長で、現相談役の坂根正弘さん。

社長に就任してすぐに、創業以来初の営業赤字。
なにをしたのか。
「生産コストの『見える化』だ。」とのこと。

えーーーーーっと、驚きました。
製造業なのに、管理会計が実行されていなかったの!?
そんなわけないとは思うのですが、何かの間違いか。

ただ、次に次のように記されています。
「コマツの国内工場と海外7工場で生産する同一機種の建機を変動コストに絞って詳細に比べると、通年に反して国内拠点のコスト競争力は高く、米国工場との比較では1ドル=70円ぐらいの超円高にならない限り、国内コストの優位性は揺るがないことがわかった。」
「米国の競合会社と比べると、コマツの利益率は慢性的に低かった。生産コストでは勝っているはずなのに、なぜ利益で劣るのか。」
この問いを突き詰めて明らかになったのが、固定費の高さだ。景気に波がある中で雇用を守ろうとすると事業多角化と称して拡大志向に走り、気がつけば不採算事業と非効率的な関節業務で固定費が肥大化していた。」

どうも2002年当時ですら、管理会計の理念が実行されていなかったのだと思われます。
意外です。大企業のはずなのに。

いや、でもどこかで聞いた話。


そう、カルビー


社長が交代し、売上はそれほど変わらないのに、営業利益がぐんぐん伸びた会社。

*カルビーHP から

 「二番手の会社に比べて、カルビーの製造原価率は異常に高かったんです。売り上げの規模は3倍あるわけだから、普通なら1割、2割低くて当たり前なのに、カルビーのほうが7%も高かった。これはどう考えてもおかしい」
売上高を100とした場合、カルビーの製造原価率は65。販管費が32で、利益はわずかに3ポイント。一方、二番手企業の製造原価率は58ポイントだった。

 このカルビーの記事を読んだ時、カルビーほどの「大きな会社が管理会計ができていない」、「社長が数字を読めていなかった」という事実に驚いたのを覚えています。

 11月のこのコマツの元社長の話でも、同じです。

 「大きな会社なのに」、(以前の)社長が数字を読めていなかった。
 
 こういう話は、きっと他にもゴロゴロあるのだろうとこの日経朝刊を読んで、やっとわかりました。

 思うのは、京セラの稲盛さんの本です。
 「稲盛和夫の実学 経営と会計」(日経ビジネス文庫、2000年)


 
 働く人は皆、一度はこの本を読んだらいいと思います。
 社長に限らず、平従業員であろうがなんであろうが、お金に関わる人は。
 
33頁
「また売上に対する販売費・一般管理費の割合にも常識と呼ばれる迷信がある。たとえば、ある業界で販売費・一般管理費が、売上の15%はかかるということが常識となっているとする。販売組織や販売方法が、各社みな類似していることが背景にあろう。
 そこで、新しく参入してくる企業が、売上に対して販売費・一般管理費が15%かかるという常識を前提にして経営すると、意図せず自然のうちに同業他社と横並びの経営になってしまう。これでは、『自社の製品をより効率的に販売するためには、一体どのような販売組織や販売方法をとるべきなのか』という重要な経営課題を根本的に考える機会を自ら放棄し、他社を模倣することになる。」

 そう。
 稲盛さんは、常に、「数字」をあるべき経営の指標にしていることがわかります。
 

 いわゆる大きな会社。

 稲盛さんのような経営、管理会計など会計を生かすのが当たり前だと思っていたのですが、カルビーの話や、今回のコマツの話をみて、意外とそうでもないんだろうなと思うようになりました。

 大きな会社も、小さな会社も、まずは自己の姿を知るものとして、「数字」,「会計」を見るようにしてみると、見えなかったものが見えて来るかと思います。

(おわり)
 
*このキムチ。コストをどのように計算し、いくらで売れば、利益が最大化するか。




2014年11月21日金曜日

労働市場の流動性、の話題~解雇規制の善悪~

*日経電子版。「私の履歴書」のサイトです。


 平成26年11月20日の日経朝刊、「私の履歴書」、坂根正弘さん。コマツの相談役の方です。
 実は、今月のものは読んでいませんでした。社内での「叩き上げ」での元社長の方の「私の履歴書」はあまり面白くない、という先入観がありました。

 が、しかし。
 この日のものは、見出しに目がいき、中を読みました。
 「雇用重視で一部が失敗

 コマツの100%子会社ではなく、米国企業と米国で作った会社での再建の話です。
 工場6つのうち、5つは閉鎖、従業員を解雇をした。しかし、テネシー州のチャタヌガ工場だけは、「日本流でやろう」ということで、
 「他工場のような閉鎖や一時解雇はせず、給料を3割カットしながらも、全員の雇用を維持したのだ。」と。

 が、しかし。
 「その後がいけない。
 米国市場が立ち直り、増産投資が必要になると、他の工場は投資して、雇用も増やしたが、『リストラしない工場』を掲げたチャタヌガでは踏ん切りがつかない」。と。
  どういうことかというと。
 「『規模を大きくして,次の不況がきたら対応できない』という心配が先に立つのだ。」
 そしてどうなったのか。
 「結局10年たってみると、他工場が大きく伸びたのに対し、チャタヌガは取り残された。」
 
 これは、全く違う話ですが、先日、ブログ「まだまだ行くよ!」に書いた相続に関するエントリーにも通じると思います。
 遺産分割てもめる相続人ら。

 争えば争うだけ、その3年後、5年後にようやく獲得目標を達成したとしても、結局は、「時間の流れ」の中で、その「時間」、つまりその資産を活用する機会、つまり「成長の機会」を失っており、結局は、誰も勝者のいない状態となっているのです。

 こうした状況をこの今はコマツ相談役となられている方は、次のように締めくくっています。
 「考えてみれば、こうしたチャタヌガの状況は、日本経済の姿とも一部重なりあ合う。『社員を大切にする』。この精神は日本企業が将来ともに守るべき大事なことだが、あまりに労働市場の流動性が低いと、会社も個人も身動きが取れなくなり、成長機会を取り逃がす。」。

 成長機会。
 時間、です。
 これは流れ去っていくもので、どれだけ裁判しても、決して取り戻すことはできません
 
 不当解雇等を争う事件。
 先日は、日本テレビの内定取消しの違法性を争う裁判の開始が大きく報道されて話題となっていました。
 損害賠償請求をするのであれば、まだ解ります。

 しかし、報道記事をみて驚いたのは、内定取消しの有効性を争い、その結果、何が獲得目標かというと、そのまま雇用をということだったようで、それが事実なら驚きだし、それがこの後の時間の流れの中で本当にその人が幸せなのか、満足いくのか私の感想ですが、非常に疑問です。
 その間、争って得るものもあるのでしょうが、失うものの方が大きいように思います。
 働いて成長する機会、成長する時間、です。
 
 正直な個人的意見で、これはいろいろ反対意見もあるところだとは思いますが。
 
 解雇の有効性を争い、雇用を求める争いというのは、その労働者の成長機会を取り逃がしていると思われてなりません。
 今の日本の法制度の中での雇用の維持と解雇規制のあり方。
 「労働市場の流動性」の低さということで、それが本当に労働者の利益になっているのか。疑問です。

 解雇を言い渡されたときに、すぐに前向きになれるのかどうか、すぐに再就職先が見つかるのかどうか。

 以前の状態とは異なり、時代も流れているように思います。

                     (おわり)
*川の流れのように。 時間は流れていきます。流れに身を委ね、未来に生きる方が「成長」し、幸せなのではないかというのが私の価値観です。


2014年11月13日木曜日

「損して、得とる」の発想


 先日、大阪はJR福島駅の近くにある洋食屋さん「泉」さんに初めて行きました。
 ここは、北区西天満にあった「キュイジーヌ」で働いていた方が10年ほど前に独立して開いたお店だとか。
 西天満の「キュイジーヌ」は、裁判所、大阪弁護士会の近くということから、昔、弁護団会議の後、20時くらいまで事務所で仕事をした帰りに友人と誘い合ってなどで、よく行っていました。

 何が、記憶に刺さっているかというと。
 「アボガド」の料理と、〆の「カツサンド」にふわっとろっの「オムライス」です。
 この西天満の「キュイジーヌ」ももとは、知る人ぞ知る「キュイジーヌ長谷川」という店の流れ。
 そして、名物料理と言われるが、上記3点。
 オムライスは、皿をテーブルに出してくれてから、目の前で皿をぶるっと揺らし、真ん中がパカッと割れて、両側にとろっと半熟の卵が流れ出すという演出です。

 この福島の「泉」さんでも、西天満の「キュイジーヌ」の名物料理、アボガド、カツサンド、そしてふわっとろっのオムライスを美味しく食することができました。
 懐かしい味!

 聞くと、ほかにも、当時、西天満の「キュイジーヌ」で働いていたシェフが、谷町4丁目あたりで独立、開業して、「キートス」というお店を開いているようです。洋食屋さんです。
 谷町4丁目といえば、大阪家庭裁判所の近く。よし。そのうち、「キートス」にも行ってみよう、と思いました。

 そして、はっと気づいたこと。
 これが、例えば、了見の狭い経営者だと、俺の店のオリジナル料理・演出手法を独立した料理人には使わせない、と言うのではないか、ということ。
 もし、それをしていたら。私は、泉に行くことはなかったかもしれないし、キートスに行こうと思うこともなかったかもしれない。また、「キュイジーヌ」も西天満から移転したということで、新しい店の方に行くかどうか。

 しかし。そうではなかった。
 一つの店にすぎなかったものが、その店で修行した人が、新しく店をもち、それまでに培った技を新しい店でも披露することで、修行した店との繋がりが途絶えず、そうした料理人が増えること、新しい店が増える事で、ドンドン、繋がりがリンクしていき、輪が広がっていく。
 これぞ、オリジナル料理を持ち出されて、一見、損しているようだけど、実は得している、という商売人の商売の仕方の鏡ではないかと手を打ちたくなりました。

 前から思っていた同じようなことは、本屋さんです。

 立ち読み禁止、として、とことん立ち読みができないよう、できないように腐心していた普通の本屋さん。
 96年。初めてアメリカ旅行をしたとき、オハイオ州のシンシナティにあったバーンズ&ノーブルズという本屋を訪れて驚きました。
 立ち読み、というか座って読めるように机とテーブルも脇においてあり、売り物の本を手にして、椅子でゆっくりと読めるシステムになっていました。
 今でこそ、日本でも、大手書店はやっと気づいてそのシステムになっています。
 見るだけ見て買わない人というのも存在するでしょうが、損してあまりある、本好き、本を買うのか好きという人への誘引になります。立ち読みし放題。

 損して、得とる。
 情報、テクニックなどは、事柄にもよるのでしょうが、「出し惜しみ」していると結局は、機会を自ら狭めていると思います。
 
 といったことを、「泉」さんで、ふわっとろっの「オムライス」をいただきながら改めて実感しました。
 「出し惜しみ」をするかどうかは、本当の商売人として「商売」に対する長期的な哲学をもっているか否かの差なんでしょうね。

 
 蛇足ですが。
 商売をしているのに、客となったときに相手の業者に「値切り」をする人というのは、本当の「商売人」ではないなと思います。
 値切って得をしたようで、結局は信頼をなくしているので、損をしているのに気づいていないだけです。 

 昔何かで読んだ、料理人さんの言葉。
 仕入れ先への支払いは真っ先にする、なぜなら。いいものを仕入れて、お客さんに提供したいから。
 値切ったりせずに、きちんと支払いをすることで、信用ができて、いいネタが入ったときには、向こうも真っ先にこちらに連絡してくれるようになった。
 
 こういう人心、心の機微が理解できないと、商売はうまくいかないと思います。
 
(おわり)

 

 

 

2014年11月11日火曜日

「僕は本社ビルを持ったことを後悔しています。」

 日経ビジネス アソシエの14年12月号。100頁。アース ミュージック&エコロジーの石川康晴社長の言葉か掲載されています。

 アース ミュージック&エコロジー。
 95年設立の、今も本社は岡山となる会社クロスカンパニーが展開する洋服ブランドです。

  サイトの会社情報にも掲載されている本社社屋の建物。

 2002年。
 「同じ頃、岡山の本社ビルが完成。設立資金を銀行から借りていたのですが、東京の店舗の売り上げが急速に下がったことで手元の現金が枯渇し、返済が負担になっていました。」
 「本社ビルの設立記念パーティーでは、惨めな気持ちでした。」「内心、その場から逃げ出したくなりました。」
 「僕は、本社ビルを持ったことを後悔しています。業績が低迷したら、土地代が安い場所に小さな事務所を借りる。業績が良くなれば、ビジネスがしやすい場所に大きな事務所を借りる。それでいいと思います。何も自社で土地を買って建物を保有する必要はない。」

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 東京に出店して好業績を上げ、浮かれていたというのが大きいとは思いますが、素朴な疑問。
 借り入れをしての本社社屋建設を止める人はいなかったのか?ということです。

 賃貸物件ならともかく、自社ビルを持つことに本当に商売上、メリットがあるのかとういのは、2002年、私でも知っていました。
 2002年,大阪。弁護士として大阪で独立し、法律事務所を開設すると決めた時、5月、ゴールデンウィークの最中、がらんとしたビジネス街を本町あたりから西天満あたりまで、パートナーとして共同経営をしようとしていたもう一人の弁護士と2人、ひたすらビルの間を歩き回りました。
 その時は、適当な物件をみつけられず。
 その後、何を思ったのか、ビルの分譲の一室の購入はどうかという案が持ちかけられしまた。確か、5000万円くらい。
 即座に、却下しました。
 柔軟性がなくなるだけで、何もいいことはないと即、判断できました。


 景気が悪くなると、バブル期前頃に建設所有していた自社ビルも、企業はどんどん手放していきました。必要ではなかったということでしょう。
 
 2000年頃。バブルがはじけてから10年近くが経とうとしています。
 なぜ、石川社長は、岡山に土地を買って自社ビルを建ててしまったのか。

 石川社長を唆した人(そそのかした)たちがいたからでしょう。
 お金を貸す人、建てる人。
 
 唆す人がいたと同時に、石川社長を止めようとする、財務の分かる人が社内あるいは顧問にいなかった。あるいは、いたけど、その懸命な意見を石川社長が振り切った?
 いずれにしても、これも、社長の責任です。
 
 「このまま会社が倒産したら、僕の生命保険で借金を返すしかない。」そう思い詰め、瀬戸大橋から飛び降りようかと思いました。」
 
 これが、社長の責任です。
 会社潰して、借金を踏み倒したからといって、死ぬ必要はまったくないですが、これほどの重圧を背負うというのが社長業なのだと思います。
 そして、その業をまっとうするためには、自分の周りに適切な人を置いておく、それが社長の本当の責任だと思います。

 ところで。駅前・岡山といえば。林原を思い出したのですが、あれはどういう話だったのか・・・。村上龍の番組に社長が出ていたときのことはうっすらと覚えていますが、その後、倒産、書籍出版とフォローしていません。そういえば、数ヶ月ほど前か、再生手続きの関係だったかで、判例集の「判例時報」で名前をみたような。金融機関がらみだったような。岡山って・・・。
                      (おわり)
*2013年2月、東京マラソンのスタート地点から。
 都庁の建物。

 

 

2014年11月3日月曜日

「吉祥印」と優良誤認表示と「課徴金」制度



1 
 景品表示法という法律があります。昭和37年に成立し、その後、数度に渡り改正されてきました。
 また、今の臨時国会での改正がほぼ確実となったようです。
 平成26年10月24日に改正法案が閣議決定されたと報道されています。
 どのような改正法案か。

 「課徴金」制度の導入です。
 法案が成立したら、平成28年春までに施行される見通しののようです。セットで、リーニエンシーといわれく「課徴金減免制度」も導入されるようです。
 消費者問題に関わる消費者側の弁護士としては、やっとここまで来たかという想いの弁護士が多いのではないでしょうか。
 
 「課徴金」の額は、不当表示のあった商品やサービスの最長3年の売上額に3%を掛けた額とされそうです。
 その表示の商品で年間5000万円の売上げがあったとしたら、3%、150万円。たいした金額ではないですね。。。

 それはさておき、景品表示法。
 平成25年の大阪を主たる舞台とした、ホテル内のレストランの高級食材の表示の「嘘」で脚光を浴びた法律だと思います。
 レストラン、しかもそれだけで間違いはないという信頼の高かったホテル内のレストランでのできごとだったということで、世間の関心をよく集めたのだと思います。
 これが、近所の小汚い、ラーメン600円のラーメン屋さんの出来事なら、さもありなんといった受け止められかたで、あれほど報道もされなかったと思います。
 結果は、消費者庁による「措置命令」でした。
 

 景品表示法は、業者に対して、表示に関していったい何を規制しているのか。
 現行法は次のとおりです。
 
 (不当な表示の禁止)
第4条 事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引について、次の各号のいずれかに該当する表示をしてはならない
一 商品又は役務の品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示し、又は事実に相違して当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示す表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの
二 商品又は役務の価格その他の取引条件について、実際のもの又は当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの
三 前二号に掲げるもののほか、商品又は役務の取引に関する事項について一般消費者に誤認されるおそれがある表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認めて内閣総理大臣が指定するもの 

 1号は、優良誤認表示、2号は、有利誤認表示といわれています。

 詳細は、消費者庁のサイトに詳しく分かりやすく解説したものがありますので、そちらを参照してください。


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 そこでふと、どうなんだろうと思いました。
 はんこ屋さんが実印、銀行印等を注文を受けるにあたっての宣伝。
 「吉祥印」です。

 印象の店・成美堂でも、なぜか、実印・銀行印の注文を受ける際、生年月日をお聞きしています。
 そして、出来たハンコには、単なるハンコ、朱肉、印鑑ケースだけでなく、確か、立派な紙に印影を映して「吉祥印」として、お渡ししていたと思います。
 
 「吉祥印」を表示て注文を受けること。これって、優良誤認?

 判断基準は、条文の文言。「実際のもの」、「事実に相違」といえるかどうかになるかと思います。「実際」って何?「事実」って何?
 カシミア60%を100%と表示していたら、「実際」や「事実」は「カシミア60%」です。
 では、「吉祥印」の場合は。

 このように、実際の企業では、この表示が、景品表示法上の優良誤認、あるいは、有利誤認の表示に当たるのかどうか、よく分からない、微妙に思えることがたくさんあるかと思います。
 
 平成26年6月に成立した景品表示法の改正法案では、事業者に対して、自社が行う商品等の「表示」に関する、管理体制の整備・強化を求めています。

 し・か・し。
 中小企業、個人事業者の法人なりの店で、このような体制、専門の人員を育成、担当することは、まあ不可能です。
 そんな余裕はありません。
 
 ここから宣伝です。
 アウトソーシング。
 本当に適法にきちんと対応したい、しかし人員配置困難。
 弁護士との顧問契約が有効だと思います。それも、毎月5万円の顧問料を払って何をしくれているのか分からない顧問料ではなく、自社の業務の特徴を見極め、コンサルタントのように提案してくれる弁護士に、です。
 月5万円。リスク管理料として安いとみるのか、無駄とみるのかは経営者次第だと思います。
 となると、この制度も、なんだか弁護士と消費者庁のやらせのようですが、事業を行うということについて、労働法・労働基準法だけでなく、消費者関連の法案からも、種々の規制、倫理感が求められる時代になっているとういことで、搾取ない発展のためにはいいことなんだと思います。

 中小企業は、資金も人員も余裕がなくて、本当に大変で、慈善事業として事業をやっているのかと怒り経営者のいるかとは思いますが、その発想の転換を求められているのでしょう。
 自社の発展のみならず、三方よし。

(おわり)

2014年10月29日水曜日

*当ブログ、当法律事務所は、東京本社の「株式会社成美堂」「成美堂出版株式会社」などとは全く関係ありません。